Lesson6-6 酢

酢は、日本の一般家庭で必ずと言って良いほど
常備されている基本の発酵調味料です。

穀物や果物から酒を醸造し、
酢酸菌を加えて発酵させたものが酢です。

世界最古の発酵調味料

酒の醸造のはじまりと酢のはじまりは、
さほど変わらないと考えられています。

数ある発酵調味料の中でも、
酢は世界最古と言われており、
紀元前5000年ごろのバビロニアの記録には、
すでに食酢をつくっていたと記されています。

日本に食酢に入ってきたのはそれよりずっと後の4〜5世紀頃のことで、
中国から伝わりました。

酢の殺菌作用

酢は、調味料として用いられるだけではありません。

酢の殺菌・防腐作用は、さまざまな食品の保存に役立ちます。

例えば日本では、ラッキョウを浸けて保存します。

また食品の生臭さを和らげる働きがあるので、
鮮魚を洗うのにも使われます。

世界では野菜を漬けてピクルスをつくるなど、
野菜の保存に昔から役立ってきたのです。


酢にはさまざまな種類があります。

ご家庭でも、数種類使っている人がいると思いますが
何となく使い分けていないでしょうか?

ここでは、日本で食酢として使用される代表的なものを取り上げます。

しっかり学習して、
正しく使い分けれられると良いですね。

米酢(こめず)

米酢は、蒸した米に麹を加えて糖化し、
酵母を加えてアルコール発酵させ、
酢酸菌を加えて酢酸発酵させたものです。

その後2〜3ヶ月熟成させれば、
味がまろやかになり、香味豊かな米酢のできあがりです。

米酢は米からつくられていることもあり、
和食との相性がとても良い酢です。

寿司飯にはもちろん、
野菜や海藻の酢の物やサラダなどに、
よく用いられます。

黒酢

普通の酢に比べ、
その深い色みが特徴の黒酢。

黒酢は、原料に玄米をつかった酢です。

黒酢の中には、全工程を壺の中でおこない、
そのまま1〜2年自然に熟成するのを待つという製造方法があり、
このような黒酢はまろやかでおいしいと言います。

壺の中で酢を熟成している。(九州)

玄米にはもともと、ビタミンやミネラルが豊富に含まれています。

そのため、黒酢は他の酢に比べて栄養価が高く、
健康にも良い
とされているので、
積極的に料理に使ってみてはいかがでしょうか。

黒酢を肉の煮込みに使うと、
臭みが取れ、柔らかい仕上がりになります。

また揚げ物などの料理に調味料として用いると、
さっぱりと食べられるのでおすすめです。

粕酢(かすず)

粕酢は、酒粕を原料につくられた酢です。

熟成すると赤く色づくため、「赤酢」とも呼ばれます。

味の特徴は、旨みが強く、酸味がまろやかなことです。

粕酢をつくるには、まず酒粕が必要なので、
酒粕の熟成に2年ほどかかります。

酢酸菌を加えた後、さらに数ヶ月から数年、発酵・熟成するので、
米酢よりも長い時間が製造のために必要です。

もともと、粕酢は江戸時代に、
高価な米酢の代替として使われていました。

しかし、今では熟成期間が長く製造に時間がかかるため、
流通量が少なく、粕酢の方が高級酢となっています。

一般家庭では使うことが少ないかもしれませんが、
老舗の料亭や江戸前寿司店などでは、
好んで使われています。

リンゴ酢

リンゴ酢は、原料にリンゴを使ってアルコール発酵させ、
酢酸菌を加えて酢酸発酵させてつくったものです。

リンゴ酢は、他の酢に比べカロリーが低く、
カリウムを多く含んでいます。

カリウムは体内の塩分を排出する働きがあるため、
むくみ予防の効果が期待できます。

リンゴのフルーティーな香りと酸味が特徴で、
炭酸水とはちみつを加えてドリンクとして飲むのに最適。

生野菜との相性も良いので、
サラダのドレッシングにも合います。

もちろん他の食酢と同じように、
肉や魚料理に使うこともできます。

ワインビネガー

ワインビネガーは、ブドウ果汁をアルコール発酵させ、
さらに酢酸菌で酢酸発酵させた酢になります。

ワインビネガーには、
赤ワインビネガーと白ワインビネガーがあります。

赤ワインビネガー

赤ワインビネガーの原料は、赤ブドウです。

酸味は強めでブドウの苦みと渋みも感じられ、
深い味わいが特徴です。

肉の煮込み料理や、
加熱して酸味を飛ばし、ソースとして利用することもできます。

白ワインビネガー

白ワインビネガーの原料は、白ブドウです。

透明感のある色と、
ブドウのフルーティーで爽やかな酸味が特徴。

こちらは、サラダやマリネ、魚料理などの、
さっぱりとした料理に使いましょう。

バルサミコ酢

バルサミコ酢は、ワインビネガーと同じようにブドウが原料です。

バルサミコ酢はブドウ果汁を煮詰め、
木樽で発酵と長期熟成をさせてつくられます。

伝統的な製法でつくられ、熟成には最低12年以上かかります。

色は黒く、少しトロっとするようなまろやかさがあり、
熟成期間が長いものは、味わいが深く、香り高くなります。

製造に時間がかかるので、その分価値は高くなります。

なお、日本のスーパーで売られているものは、
着色料やカラメルを加えたバルサミコ風調味料が多いです。

本物のバルサミコ酢は、イタリアで生産されたものになるので、
商品をよく確認してから購入しましょう。


次のページでは、「本みりん、麹、酒粕」について学習しましょう。