
このレッスンでは、発酵と腐敗について学習しましょう。
発酵とは微生物による働きによって起こされる、
化学反応であることを学びましたね。
発酵も腐敗も、微生物の働きであるという観点から言えば、
同じ現象と言えます。
人間にとって有益なものが「発酵」であり、
不利益をもたらすものが「腐敗」と分けられています。
例えば、放置した牛乳に「乳酸菌」が入ればおいしいヨーグルトになりますが、
雑菌が入れば腐敗してしまい、匂いや味が悪くなります。
乳酸菌が入ってできたヨーグルトも雑菌が入った牛乳も、
微生物による働きには違いありませんが、
一方は「発酵」で、もう一方は「腐敗」なのです。
では、菌の種類によって「発酵」と「腐敗」に分けられるのかというと、
そうでもありません。
ヨーグルトをつくる乳酸菌の活動は「発酵」になりますが、
日本酒に乳酸菌が増殖した場合は「腐敗」となります。
「腐敗」とは、色や味が悪くなり、食べられなくなった状態を指し、
それ以外では「発酵」というような基準で分けられています。
カビ

食品の見た目や風味を損なうものに、「カビ」があります。
パンやフルーツを放置しておいたらカビてしまったと言う経験は、
誰にでもあります。
そのためカビに対しては、
嫌な印象を持っている人が圧倒的に多いでしょう。
しかし、カマンベールチーズに見られるように、
カビの中には独特のおいしい風味をもたらすものもあり、
一口にカビといっても種類はさまざまです。
カビには、毒性のあるもの、無いものがあります。
ここでは主なカビの種類について色別にまとめましたので、
確認してください。
| 白カビ | 白カビは食品など、あらゆるところで発生します。 毒性がある場合があるので、食品にできた時には注意が必要です。 カマンベールチーズのカビは、青カビの仲間です。 チーズが作られる過程でできたカビは食べても大丈夫ですが、 後からできた白カビは食べない方が良いでしょう。 |
| 青カビ | 青カビは、空気中に浮遊しており、 食品に発生しやすいカビです。 ブルーチーズの青カビは食べられますが、 後から発生した青カビについては食べない方が良いでしょう。 医薬品のペニシリンは、青カビから作られています。 |
| 黒カビ | 黒カビは住宅でよく発生するカビです。 エアコンの中やお風呂で見られるカビは、このカビになります。 毒性はありませんが、吸い続けるとアレルギーの原因になり、 体調を崩す人もいるので注意してください。 |
| 赤カビ | 赤カビは、植物病原菌の1つで、植物を腐敗させてしまいます。 古くなったパンなどにも見られることがあります。 赤カビは毒性がありますので、食品に見つけた場合には迷わず廃棄しましょう。 |
カビには上記以外にもさまざまな種類があります。
中には「アフラトキシン」という
強い発がん性のある毒素を分泌するカビもありますので、
注意しましょう。
アフラトキシンは、穀物やナッツ類などに多いカビ毒です。
食中毒

「食中毒」はどのようにして引き起こされるのでしょうか。
実は腐敗してしまった食品をたとえ口にしたとしても、
下痢や嘔吐といった症状が起こることはあまりありません。
食中毒は特定の病原菌の増殖により、
引き起こされるからです。
つまり、腐敗とは異なるので、
食品の味や見た目、匂いなどで判断がつきにくいのです。
みなさんもたびたびニュースを騒がせる、
「O-157」「ウェルシュ菌」などは、聞いたことがあるでしょう。
食中毒を引き起こす、主な微生物を下にまとめました。
| 微生物 | 原因となる食品 | 備考 |
| サルモネラ属菌 | 生肉、卵、サラダなど | ほとんどは60℃ 15分の加熱で殺菌できる。 |
| ウェルシュ菌 | カレー、シチューなどの煮物 | 年間を通して発生するが、特に夏季に多発。 |
| 腸炎ヒブリオ | 未加熱の魚介類など | 熱に弱いため、十分な加熱で防げる。 |
| リステリア菌 | チーズなどの乳製品、食肉加工品、サラダ | 重症化すると致死率が高い。 |
| 黄色ブドウ球菌 | 寿司、肉、卵、乳など | 耐熱性が強く、加熱しても完全には失活しない。手指の傷口により汚染することが多い。 |
| ボツリヌス菌 | 発酵食品、缶詰、真空パック食品 | 熱に強く、100℃では殺菌できない。120℃ 4分の加熱か、冷蔵保存などで対策。 |
| セレウス菌 | 魚介類、肉、乳製品など | 加熱後も増殖することがあるので、すぐに食べるか、冷蔵保存する。 |
| 腸管出血性大腸菌 O157 | 牛肉ほか | 初夏〜初秋に多発。加熱により死滅する。 |
| ノロウイルス(※) | 二枚貝など | ウイルスの増殖程度によるが、加熱(85℃以上 1分以上)により失活する。 |
※ウイルスは厳密には生物ではありませんが、参考のために一緒に掲載しています。
家庭で発酵食品に挑戦する際にも、
カビの発生に注意し、食中毒の予防に努めましょう。
Lesson2では、発酵のしくみについて学習しました。
Lesson3からは、発酵を起こす微生物について、
詳しく解説していきます。