Lesson2-3 発酵と腐敗

このレッスンでは、発酵と腐敗について学習しましょう。

発酵とは微生物による働きによって起こされる、
化学反応であることを学びましたね。

発酵も腐敗も、微生物の働きであるという観点から言えば、
同じ現象と言えます。

人間にとって有益なものが「発酵」であり、
不利益をもたらすものが「腐敗」と分けられています。

例えば、放置した牛乳に「乳酸菌」が入ればおいしいヨーグルトになりますが、
雑菌が入れば腐敗してしまい、匂いや味が悪くなります。

乳酸菌が入ってできたヨーグルトも雑菌が入った牛乳も、
微生物による働きには違いありませんが、
一方は「発酵」で、もう一方は「腐敗」なのです。

では、菌の種類によって「発酵」と「腐敗」に分けられるのかというと、
そうでもありません。

ヨーグルトをつくる乳酸菌の活動は「発酵」になりますが、
日本酒に乳酸菌が増殖した場合は「腐敗」となります。

「腐敗」とは、色や味が悪くなり、食べられなくなった状態を指し、
それ以外では「発酵」というような基準で分けられています。

カビ

食品の見た目や風味を損なうものに、「カビ」があります。

パンやフルーツを放置しておいたらカビてしまったと言う経験は、
誰にでもあります。

そのためカビに対しては、
嫌な印象を持っている人が圧倒的に多いでしょう。

しかし、カマンベールチーズに見られるように、
カビの中には独特のおいしい風味をもたらすものもあり、
一口にカビといっても種類はさまざまです。

カビには、毒性のあるもの、無いものがあります。

ここでは主なカビの種類について色別にまとめましたので、
確認してください。

白カビ白カビは食品など、あらゆるところで発生します。
毒性がある場合があるので、食品にできた時には注意が必要です。
カマンベールチーズのカビは、青カビの仲間です。
チーズが作られる過程でできたカビは食べても大丈夫ですが、
後からできた白カビは食べない方が良いでしょう。
青カビ青カビは、空気中に浮遊しており、
食品に発生しやすいカビです。
ブルーチーズの青カビは食べられますが、
後から発生した青カビについては食べない方が良いでしょう。
医薬品のペニシリンは、青カビから作られています。
黒カビ黒カビは住宅でよく発生するカビです。
エアコンの中やお風呂で見られるカビは、このカビになります。
毒性はありませんが、吸い続けるとアレルギーの原因になり、
体調を崩す人もいるので注意してください。
赤カビ赤カビは、植物病原菌の1つで、植物を腐敗させてしまいます。
古くなったパンなどにも見られることがあります。
赤カビは毒性がありますので、食品に見つけた場合には迷わず廃棄しましょう。

カビには上記以外にもさまざまな種類があります。

中には「アフラトキシン」という
強い発がん性のある毒素を分泌するカビもあります
ので、
注意しましょう。

アフラトキシンは、穀物やナッツ類などに多いカビ毒です。

食中毒

「食中毒」はどのようにして引き起こされるのでしょうか。

実は腐敗してしまった食品をたとえ口にしたとしても、
下痢や嘔吐といった症状が起こることはあまりありません。

食中毒は特定の病原菌の増殖により、
引き起こされるからです。

つまり、腐敗とは異なるので、
食品の味や見た目、匂いなどで判断がつきにくいのです。

みなさんもたびたびニュースを騒がせる、
「O-157」「ウェルシュ菌」などは、聞いたことがあるでしょう。

食中毒を引き起こす、主な微生物を下にまとめました。

微生物原因となる食品備考
サルモネラ属菌生肉、卵、サラダなどほとんどは60℃ 15分の加熱で殺菌できる。
ウェルシュ菌カレー、シチューなどの煮物年間を通して発生するが、特に夏季に多発。
腸炎ヒブリオ未加熱の魚介類など熱に弱いため、十分な加熱で防げる。
リステリア菌チーズなどの乳製品、食肉加工品、サラダ重症化すると致死率が高い。
黄色ブドウ球菌寿司、肉、卵、乳など耐熱性が強く、加熱しても完全には失活しない。手指の傷口により汚染することが多い。
ボツリヌス菌発酵食品、缶詰、真空パック食品熱に強く、100℃では殺菌できない。120℃ 4分の加熱か、冷蔵保存などで対策。
セレウス菌魚介類、肉、乳製品など加熱後も増殖することがあるので、すぐに食べるか、冷蔵保存する。
腸管出血性大腸菌 O157牛肉ほか初夏〜初秋に多発。加熱により死滅する。
ノロウイルス(※)二枚貝などウイルスの増殖程度によるが、加熱(85℃以上 1分以上)により失活する。

※ウイルスは厳密には生物ではありませんが、参考のために一緒に掲載しています。


家庭で発酵食品に挑戦する際にも、
カビの発生に注意し、食中毒の予防に努めましょう。

Lesson2では、発酵のしくみについて学習しました。

Lesson3からは、発酵を起こす微生物について、
詳しく解説していきます。