
Lesson3では、微生物について学習を進めましょう。
微生物とは一般的に、肉眼では見ることができず、
顕微鏡を用いなければ観察できない小さな生物のことを
言います。
地球には数百万種類の微生物が存在すると考えられており、
空気中や土壌、水のみならず、
動物や人間の体にも生息しています。
お腹の中に生息する何兆個もの腸内細菌も、
微生物の種類なのです。
「菌」と聞くと悪さをするイメージがありますが、
私たちが生きていくために必要な働きをしてくれる
良い微生物もたくさんいます。
例えば先ほどの腸内細菌のうち、
乳酸菌やビフィズス菌は「善玉菌」とも呼ばれ、
腸の健康に役立っています。
微生物の役割
これまでのレッスンで発酵のしくみについて学んだように、
微生物の主な役割は「分解」です。
発酵食品を作るような、
人間にとって有益な微生物はどのようなものがいるでしょうか。
大きく3つに分けられます。
- カビ
- 細菌
- 酵母菌
カビ
発酵食品を作る「カビ」の代表的なものは、
麹菌や青カビなどです。
味噌や甘酒を作る、日常生活でも馴染みが深い「麹」が、
カビと知って驚く人もいるのではないでしょうか。
カビは、ある程度湿度の高い地域で繁殖します。
そのため、日本や東南アジア地域などでは
カビを用いた発酵食品が多いですが、
湿度が低いヨーロッパでは
カビの発酵食品はほとんど見られません。
カビについては、
Lesson2-3「発酵と腐敗」を復習しましょう。
細菌
発酵食品を作る「細菌」には、
乳酸菌や酢酸菌があります。
酵母菌
「酵母菌」の代表的なものには、
パン酵母やビール酵母、清酒酵母があげられます。
それでは実際に、発酵食品をつくる代表的な微生物について、
一つ一つ学習していきましょう。
ここでは、「麹菌」について解説します。
麹菌

前述の通り、麹菌はカビの一種です。
カビは、菌糸と呼ばれる糸のような細胞を伸ばす生物です。
この菌糸の集合体である菌糸体なら、
私たちも「カビ」として肉眼で観察することができます。
麹菌は、穀物のデンプンやタンパク質を分解し、
糖分やアミノ酸をつくり出すため、
麹菌でできた発酵食品は「甘み」と「旨み」があります。
米麹と水を混ぜて発酵させただけの「甘酒」が、
砂糖を入れなくても甘いのはこのためです。
ちなみに「麹」は、米や大豆、麦などの穀物類に、
カビの一種である麹菌を付着して繁殖したものになります。
麹は味噌や醤油など、古来より日本食に欠かせない発酵食品を
つくり出してきました。
このことから日本醸造学会は日本を代表する微生物として、
麹菌を「国菌」として認定しています。
麹菌の種類
麹菌には、
- 黄麹菌(きこうじきん)
- 黒麹菌(くろこうじきん)
- 白麹菌(しろこうじきん)
などがあります。
一般的に「麹菌」というと、黄麹菌を指します。
黄麹菌は、味噌や醤油づくりに用いられる、
日本古来のカビです。
黒麹菌は、黄麹菌よりもクエン酸をより多く生成し、
泡盛を醸造するときに使われています。
白麹菌は黒麹菌の変異種で、
色が黒い黒麹よりも扱いやすく、
クセも少ないということで、
焼酎づくりに用いられています。

カビ毒はないのか?
Lesson2-3「発酵と腐敗」で、
穀物などに多いカビ毒「アフラトキシン」について学びましたね。
では、麹菌にはアフラトキシンは発生しないのでしょうか?
日本では1960年代に、
麹菌がアフラトキシンをつくる菌とよく似ていることから、
麹菌の安全性が問題視されました。
麹菌を用いた発酵食品の生産や輸出にも多大な影響を与えることになるため、
日本中の麹菌を集めて遺伝子を解析することになりました。
その結果、麹菌はアフラトキシンを生成することができないことが確認され、
安全宣言が出されたという経緯があります。
麹菌は、アメリカでも「安全」と認められており、
今も多くの発酵食品に用いられているのです。
日本の発酵食品には欠かせない微生物「麹菌」について、
解説しました。
ご家庭でも麹を使っている人は多いのではないでしょうか。
麹とはそもそも何なのか、
どうして麹を使うと食材がおいしくなるのか、
理解できたことと思います。
次のページでは、「乳酸菌」について学びましょう。