
発酵食品の起源
発酵食品の歴史は非常に古いと考えられています。
人類は、発酵というしくみや、
発酵を促す微生物の存在を知るずっと前から、
発酵食品を取り入れてきました。
捕まえた獲物などの食品を放置していたら、
たまたま腐らないで味や香りが良くなったという経験を積み重ね、
発酵食品を食するようになったのでしょう。
発酵の起源は、諸説あります。
ヨーグルト
そのうちの一つが、現代では日本の食卓にも当たり前のように並ぶ、
ヨーグルトです。
ヨーグルトの発祥は、紀元前5000年頃の中央アジアとされています。
遊牧民がヤギや羊の乳を容器に入れて放置しておいたところ、
いつのまにか酸味のある別の飲み物に変わっていることに
気がつきました。
中央アジアの乾燥した気候の影響もあり、
乳が腐らずに発酵したのでしょう。
古代の人々はこの経験から、
乳を保存して食生活に取り入れてきたと考えられます。
お酒
発酵食品の起源と考えられるもう一つのものは、
お酒です。
現在のジョージアがある地方で、
紀元前6000年頃にワインが醸造されていたと見られる出土品が
見つかっています。
果実を潰して放置しておけば、
酵母菌によりアルコール発酵が進みます。
潰した果実の発酵が自然に進み、
広まっていったのでしょう。
ビールの歴史も古いことで知られています。
紀元前4000年(推定)頃、
メソポタミアで麦粥を放置しておいたところ、
酵母が入って発酵が進んだようです。
最古の記録は紀元前3000年頃のシュメール人の版碑で、
そこにビールの醸造方法が記してあります。
日本の発酵食品の歴史

それでは日本の発酵食品の歴史を見ていきましょう。
日本では旧石器時代から、
ヒエやアワなどの雑穀を利用してお酒がつくられていたようです。
当時の発酵方法は、雑穀を口にふくんで噛み砕き、
壺などの容器に吐き出してためておくというものでした。
唾液には消化酵素が含まれているため、
それが雑穀のデンプン質を分解し、
そこに空気中の酵母が入り込み発酵したのでしょう。
縄文中期の樽形の土器が長野県で出土され、
当時、その土器で酒を保存していたのではないかと考えられています。
その後、奈良時代には麹を用いて、
味噌、醤油、酢などの原型がつくられていました。
その後、灰汁を使って麹菌を取り出すなど、
発酵技術が発展し、広まっていきました。
室町時代には種麹屋も出現し、
麹菌の販売もおこなわれるようになったようです。
日本で発酵食品が古来より日常的になった背景として、
日本の国土が海に囲まれているということが理由の一つと考えられます。
塩が取りやすかったため、
食材を保存するのに活用されていたのでしょう。
人類が発酵を促す微生物の存在を知ることになるのは、
顕微鏡が発明される17世紀のこと。
それ以降、微生物の研究が進み、
発酵は微生物によって起こされることがわかったのです。
しかし、微生物の存在や発酵にまつわる複雑なしくみを知らなくても、
古代の人々はたび重なる「体験」を積み重ね、
食材がおいしくなるための発酵という保存方法を見つけてきました。
発酵食品は、偶然の賜物だったのですね。
次のページでは、発酵の種類について解説します。