Lesson2-1 発酵の種類

Lesson2では、発酵のしくみについて学習を進めましょう。

発酵を理解するには、
主な発酵の種類について知っておく必要があります。

発酵の種類は1つではありません。

微生物は数千種類もいるわけですから、
そのうち人間にとって有益となる微生物の活動も、
たくさんあります。

発酵は、微生物の活動によって促される生化学反応です。

そのためこのページでは、
発酵を化学的な視点からも理解するために、
化学式も一緒に確認しましょう。

アルコール発酵

発酵の中でも代表的な形が、アルコール発酵です。

アルコール発酵は、グルコース、フルクトース、ショ糖などの糖を分解して、
エタノールと二酸化炭素を生成し、
それによってエネルギーを得る微生物の活動過程のこと
です。

この発酵は、酸素を必要としない嫌気的反応になります。

例えば、アルコール発酵をする微生物として身近なものは酵母ですが、
酵母は酸素が無い環境で糖を分解してアルコールを生成します。

アルコール発酵の化学反応式

ワインや清酒、ビールといったアルコール飲料は、
酵母のアルコール発酵によってつくられています。

さらにもう1つの産物である二酸化炭素の発生を利用してパンが作られていることは、
Lesson1-1ですでに解説したとおりです。

二酸化炭素の気体が、パン生地を膨らませてくれるのです。

また、食品以外では燃料としてのエタノールの生産にも、
用いられています。

乳酸発酵

乳酸発酵も、さまざまな発酵食品に利用されており、
私たちの食生活ではとても重要な発酵形式の一つです。

乳酸発酵は、酸素が無い環境で糖を分解し、
最終的に乳酸を生成する発酵形式です。

この反応で酸性になるため、
他の微生物の増殖を抑えることもできます。

つまり乳酸発酵した食品は、腐敗の心配が少なくなります。

乳酸発酵の化学反応式

乳酸発酵は、ヨーグルトやチーズなどの乳製品の製造や、
漬物や味噌といった日本の発酵食品、
さらには日本酒の製造過程でも利用されています。

酢酸発酵

酢酸(さくさん)発酵とは、
酢酸菌の働きによってエチルアルコールが酸化され、
中間生成物のアセトアルデヒドを経て酢酸を生成する発酵です。

つまり、酢酸菌によってお酒がお酢になるのです。

酢酸発酵の化学反応式

酢酸発酵は、食酢を製造するときに利用される発酵形式になります。

日本では米酢、ヨーロッパではワインビネガーがあり、
料理の内容によって使い分けている人も多いのではないでしょうか。

ヨーグルトやお酒の歴史については前回のページで触れましたが、
実は食酢の歴史も非常に古く、
紀元前5000年頃には存在していたのではないかと言われています。

天然の酢酸菌は、果実などの食品に存在します。

昔は放置しておいたお酒に酢酸菌が入り込み、
自然に酢になってしまったのでしょう。

日本には4世紀頃に伝わりました。


このページでは、代表的な3つの発酵である、

  • アルコール発酵
  • 乳酸発酵
  • 酢酸発酵

について解説しましたが、発酵の種類は他にもあり、
アミノ酸発酵、メタン発酵、酪酸発酵などさまざまです。

次のページでは、
発酵のしくみについてより詳しく解説を進めます。