
前回のレッスンでは伝統産業で活用される発酵について学びましたが、
このページでは、
現代社会や未来で活用される発酵の用途について解説します。
バイオマスエネルギー
人間が現代社会を生きる時、
エネルギー無しでは何もすることができません。
現在は、石油や石炭といった化石燃料で、
エネルギーのほとんどがまかなわれています。
しかし、化石燃料はいつの日か枯渇します。
そこで化石燃料に代わるエネルギーとして登場したのが、
再生が可能でクリーンである再生可能エネルギーです。
再生可能エネルギーの中には、
植物や穀物、野菜、おが屑、もみ殻、糞尿などを利用した
バイオマスエネルギーがあります。
バイオマスエネルギーは、微生物の代謝を利用し、
発酵の力によって生み出されるエネルギーです。
ここではバイオマス(※)から燃料に変換したバイオ燃料のうち、
バイオエタノールについて解説します。
(※)バイオマス:動物・植物・微生物など、自然界を構成する生命体のこと。
再生可能な有機性資源を指す。
バイオエタノール
バイオエタノールは、微生物を利用してつくったエタノールで、
バイオ燃料の1つです。
バイオエタノールの原料は主に、
トウモロコシ、サツマイモ、ムギ、サトウキビ、テンサイなどです。
これらのバイオマスに含まれる糖分を発酵させ、
蒸留してエタノールをつくります。
しかし、トウモロコシやサトウキビなどは食用でもあるため、
バイオ燃料の原料にしてしまうと食料価格の高騰を招いてしまうのが問題です。
そこで木材やワラなど、食用でないものを原料として使えるように、
さまざまな研究がおこなわれています。

カーボンニュートラル
カーボンニュートラルとは、
人が何かを生産しようとする際、
大気中から吸収される二酸化炭素と、
大気中に排出される二酸化炭素の量が同じであり、
総量が変わらないという考え方のことです。
植物は、大気中の二酸化炭素を吸収し、光合成をおこないます。
植物を原料とした燃料を燃やしても、
化石燃料のように二酸化炭素は排出されてしまいますが、
「その二酸化炭素は植物が大気から吸収した二酸化炭素と同じ量」
ということです。
つまり、バイオ燃料は化石燃料のように、
二酸化炭素の量が増えることはありません。
二酸化炭素を含む温室効果ガスは気候変動の原因となるため、
カーボンニュートラルは今後有益かもしれないと注目されています。
バイオプラスチック

私たちの身の回りは、プラスチック製品であふれています。
石油を原料につくられているプラスチックは、
成形や着色がしやすく、軽くて丈夫なのでとても便利ですが、
使い終わった後の処理に問題があります。
土に埋めても分解しませんし、
かと言って燃やすと有害なガスを発生し、
環境汚染の原因となっています。
そこで考えられたのが、バイオプラスチックです。
バイオプラスチックは、トウモロコシなどの再生可能資源を原料として、
微生物の発酵を利用してつくられるプラスチックです。
例えばポリ乳酸は、
乳酸をたくさんつなげてつくるプラスチックです。
乳酸は人間の体内にも存在するので、
ポリ乳酸は人体にも安全な製品になります。
乳酸は微生物が生成し、微生物によって分解されます。
そして、最終的には二酸化炭素と水になり自然界に戻るので、
環境に優しいプラスチックなのです。
乳酸菌は体に良いばかりでなく、
工業的な面でも私たちの生活を支えてくれているのですね。
バイオプラスチックの分解性
バイオプラスチックは分解されるため、
石油由来のプラスチックに比べ耐久性は劣ります。
しかし、この「分解される」という性質を利用した製品もあります。
例えば、手術用の縫合糸です。
傷が癒える頃には、糸は分解されてしまうので、
抜糸をする必要がなくなります。
そのほか、注射器などの使い捨ての医療器具にも使われています。
Lesson8では、食品以外での発酵の活用について解説してきました。
人間の生活には、昔から発酵が活用され、
そして現在、未来にも受け継がれていくことがわかりましたね。
発酵の活用技術によってますます人間の生活が豊かになり、
そしていつか、環境汚染のない未来が訪れることに期待は膨らみます。
次のレッスンでは、発酵食品のレシピを学習しましょう。