
このレッスンでは、日本全国ご当地の発酵食品を解説します。
地方の郷土料理となると、
見たことも聞いたこともないというものもあるかもしれません。
めずらしい発酵食品が全国各地にたくさんありますので、
しっかり学習して身につけていきましょう。
アケビのなれずし

前回のレッスンで、魚を使ったなれずしについて解説しましたが、
青森県には植物を使っためずらしいなれずしがあります。
それが「アケビのなれずし」です。
アケビのなれずしの材料は、アケビ、ヤマブドウ、
もち米、砂糖、塩です。
まず、山で採れたアケビの種子を取り除き、
皮を熱湯にさらします。
炊いたもち米、ヤマブドウ、砂糖、塩を混ぜ(A)、
湯に通したアケビの皮に詰めます(B)。
残った(A)を桶に敷き詰め、
その上に(B)をのせ、
その上にさらに(A)をのせ、発酵させます。
発酵期間は2ヶ月ほど。
秋に漬けたなれずしは、お正月ごろに食べ頃です。
もち米が赤紫色に染まり、美しい色のなれずしのできあがりです。
酸味と甘み、そしてほのかなアルコール臭が、
食欲をそそります。
魚や肉を使ったなれずしはありますが、
植物だけでつくるアケビのなれずしは、
世界的にも大変めずらしい発酵食品です。
めふん(北海道)

「めふん」は、北海道で食される発酵食品で、
塩辛の一種です。
アイヌ語で魚の腎臓を意味する「メフル」が語源ではないかと
言われています。
めふんに用いられるのは、サケやマスの腎臓。
サケの腎臓は少ししか取れないため、
希少な珍味として知られています。
見た目はイカの塩辛と違い黒っぽく、
とろみのある食感です。
お酒のおつまみやご飯によく合い、
貧血の予防などにも役立ちます。
塩のほか、醤油で漬けるめふんもあります。
黒作り(富山県)

富山県にも独自の塩辛があります。
それがイカの塩辛に、イカ墨を入れて黒くした「黒作り」です。
イカ墨のパスタを食べたことがある人ならわかると思いますが、
イカ墨を入れるとコクが出て、マイルドな味わいになります。
そのため、見た目とは異なり、
普通の塩辛よりも食べやすいという人もいるぐらいです。
イカ墨には防腐作用や、整腸作用などの効果が期待でき、
栄養も豊富なため、健康食品としても期待できます。
材料のイカはスルメイカが一般的で、
ホタルイカが使われることもあります。
水戸納豆(茨城)

納豆はスーパーで普通に購入することができる発酵食品ですが、
「水戸納豆」は全国的に有名です。
茨城県は納豆の生産量日本一ですが、
その中でも特に水戸市で製造されるものを「水戸納豆」と言います。
水戸納豆が知られるようになったのは、100年以上も前のこと。
老舗納豆メーカーが、
駅前で納豆を販売し始めたことで、
「水戸納豆」という名が広まりました。
もともと水戸では農家が自家製の納豆をつくっており、
納豆文化は古くからこの地方で定着していたようです。
特に藁で包まれた納豆は見た目にもおいしそうで、
お土産にピッタリです。
くさや(伊豆七島)

「くさや」は伊豆七島で生まれた魚の干物です。
くさやに使われる魚は、
ムロアジやトビウオなど。
くさやはその名の通り、強烈な匂いと風味があります。
あまりにも強烈なため、
好き・嫌いがはっきりする発酵食品でもあります。
くさやは、まず魚を開いて血抜きし、
それをくさや汁に10〜20時間ほど漬け込み、
天日干しして乾かします。
くさや汁は、もともとは海水です。
それに魚を何回も漬けているうちに水が発酵し、
くさや汁となりました。
同じ海水を何度も使うのは、
江戸時代には塩を幕府に年貢として納めていたため、
塩が大変貴重だったためです。
くさや汁には大量の微生物が発生し、一見不衛生に見えますが、
人間に害を及ぼす大腸菌やサルモネラ菌などは、
くさや汁の中では生息できず、
臭いはありますが腐敗はしないのです。
くさや発祥の伊豆七島は、昔は医療体制が整っておらず、
体調を崩したり、ケガをした時には、
このくさや汁を薬代わりに使っていました。
くさや汁で発生する微生物は、他の微生物を抑制するために、
抗生物質が生成されるからです。
くさや汁は、まさに天然の抗生物質なのでしょう。
ちなみに、調理方法は通常の干物と同じですが、
加熱すると強烈な臭いが発生するため、
周囲への配慮を忘れないようにしましょう。
次のページでも引き続き、
日本全国ご当地の発酵食品を見ていきましょう。