わさび漬け(静岡県)

わさび漬けとは、生ワサビの茎、葉、根をきざんで塩に漬け、
それを塩や砂糖などで調味した酒粕に漬けたものです。
ワサビのツンとした刺激と、
酒粕の甘い風味がうまく合わさり、
ご飯のお供や酒の肴にぴったりの発酵食品です。
かまぼこに挟んで食べるのもおすすめ。
ワサビ産地の日本一を誇る静岡が名産地となり、
お土産でも有名ですが、
静岡では一般家庭の食卓に並ぶことも多いようです。
フグの卵巣のぬか漬け(石川県)

フグの卵巣のぬか漬けは、
石川県でつくられている発酵食品です。
フグにはテトロドトキシンという
猛毒が含まれていることで知られていますが、
特に卵巣は猛毒で危険です。
あやまって食べてしまうと、死に至ります。
しかし、フグの卵巣をぬかに長期間つけておくと、
不思議なことに猛毒テトロドトキシンが抜け、
食べられるようになります。
まず卵巣を塩漬けし、1年間保存します。
その後、ぬかに漬けて重石をのせ、2〜3年発酵させれば
食べ頃です。
塩漬けすると水分が抜けるので、この時、
毒もかなり抜けてしまいます。
さらにその後のぬか漬けの過程において、
乳酸菌と酵母の働きにより、完全に無毒化されるのです。
これほど猛毒の食品を発酵によって無毒化して食すことは、
世界中を見渡しても非常に稀なことで、
まさに奇跡的に生まれた珍味の発酵食品としか言いようがありません。
さすが発酵王国日本ですね。
発酵して食べ頃になったふぐの卵巣は、
ご飯のお共やお茶漬け、酒の肴にはもちろん、
パスタの材料にしてもおいしくいただけます。
ふなずし(滋賀県)

魚とごはんを一緒に発酵させる「なれずし」については
すでに学びましたが、ふなずしはその代表格です。
ふなずしは主に、琵琶湖産のニゴロブナを使用することが多く、
中でも子持ちのフナは貴重になります。
春先に獲れたフナを塩漬けした後、
ご飯とともに漬け込み、乳酸発酵させます。
発酵は数ヶ月に渡り、正月頃に食べ頃となります。
奈良時代の記録に残っているほどその歴史は古く、
これまで伝統が受け継がれてきました。
ふなずしはこの地方ではハレの日のごちそうで、
正月や人が集まった時に食されています。
乳酸菌の働きにより整腸作用があり、
栄養価も高いことで知られています。
奈良漬け(奈良県)

奈良漬けは、全国的にも有名な奈良の漬物です。
奈良漬けは粕漬けの一種で、
白瓜やキュウリなどの野菜を塩漬けし、
酒粕に漬け込んだものです。
発酵期間中、複数回、酒粕を漬けかえます。
製造メーカーによって、発酵の期間は異なりますが、
短くても半年以上、長くて数年漬け込むこともあるため、
奈良漬けの見た目は当初の野菜の姿とは大きく異なり、
上の写真のようにベッコウ色になるのが特徴です。
味はメーカーによって異なりますが、
甘みや塩味に、独特の風味とコクが加わります。
奈良漬けの記録は奈良時代にまでさかのぼり、
江戸時代にはすでに庶民の間で広まっていたとされていますから、
日本を代表する伝統的な漬物と言えるでしょう。
酒盗(高知県)

これまでいくつかの塩辛について学びましたが、
「酒盗(しゅとう)」も塩辛の一種です。
酒盗の原料は、カツオの内臓。
カツオの内臓を塩に漬け込み、発酵・熟成させたものが
酒盗です。
一般的な塩辛は、魚の身を使いますが、
酒盗は内臓しか使いません。
ところで、どうして「酒盗」という名前なのでしょうか?
それは、酒盗は酒の肴にぴったりで、
「盗まれるように酒がなくなっていく」からだと言われています。
土佐藩第12代藩主の山内豊資(やまうちとよすけ)も、
好んで食していたようです。
酒盗というその名の通り、酒の肴にはもちろんのこと、
クリームチーズと一緒に食べたり、
さまざまな料理の隠し味に使うのもおすすめです。
豆腐よう(沖縄)

豆腐ようは、沖縄でつくられている、
まるでチーズのような濃厚な味わいの発酵食品です。
その歴史は琉球王朝時代にまでさかのぼり、
明(現在の中国)から伝わった「腐乳」であったと言われています。
当時は高貴なものとして、
上流貴族の間で食されていました。
現在では、琉球懐石料理の一皿には上がりますが、
スーパーや土産物屋でも買える、沖縄の一般的な食品となっています。
豆腐ようの原料は、豆腐、泡盛、紅麹(べにこうじ)です。
塩をふった豆腐にふきんをかけて陰干しし、泡盛で洗い、
麹菌を漬けた泡盛の漬け汁に漬け込みます。
塩味が強く、アルコール度数も高いため、
キャラメルぐらいの小さなものを、
泡盛の肴として少しずつ食べるのが一般的です。
さまざまな料理の隠し味としてもおすすめ。
まるでウニのような風味と、
チーズのような舌触りはまさに珍味です。
日本全国、ご当地の発酵食品を学びました。
これまで食べたことがあったものや、
初めて知った食品が登場したと思います。
旅行に行った時には、ぜひご当地の発酵食品を賞味してみましょう。
また現在では、お取り寄せも手軽です。
気になるものがあれば、積極的にお取り寄せも活用しましょう!
次のレッスンでは、発酵飲料について解説します。