Lesson4-5 発酵茶

お茶にも発酵させたものがあることを知っていますか。

一般的なものでは、紅茶やプーアール茶が発酵茶の仲間です。

発酵茶と呼ばれるものには2種類あります。

1つ目が、茶葉が持つ酵素の働きによって、
発酵に似た現象を起こさせるお茶
です。

つまり酸化よって成分が変化することで、
茶葉が褐色に変色していくので、
微生物による発酵とは種類が異なります。

この種のお茶で代表的なものが「紅茶」です。

2つ目が、微生物による働きによって発酵させたお茶です。

これはカビや、乳酸菌の働きによって発酵させていきます。

この種のお茶の代表的なものが「プーアール茶」です。

なお、微生物によって発酵させたお茶のことを、
後発酵茶(こうはっこうちゃ)」と呼ぶこともあります。

このページでは、
微生物の働きで発酵させた日本のお茶について
学習しましょう。

阿波番茶(徳島県)

阿波番茶(あわばんちゃ)は、
徳島県で生産されている乳酸発酵茶です。

「番茶」とは言うものの、
製造方法や使用する茶葉が一般的な番茶とは異なるため、
「晩茶」と記載されることもあります。

阿波番茶は、成長した葉を使用します。

7月〜8月に摘んだ成葉を釜茹でし、
桶で2〜4週間ほど乳酸発酵させ、
その後、天日干しさせて完成です。

こうして発酵させたお茶は、
旨みの成分であるグルタミン酸やアスパラギン酸を多く含むため、
まろやかさと甘酸っぱさのある独自の味と香りを楽しめます。

カフェインの含有量が少ないため、
カフェインが苦手な人にもおすすめです。

ほとんどが人の手で作られているため、
生産量が少なく、希少価値の高いお茶です。

碁石茶(高知県)

碁石茶は高知県大富町の特産品です。

碁石茶には数百年の伝統があるにも関わらず、
昭和期に入ると生産者が激減しました。

現在でも少数の農家のみが秘伝の方法で生産しているため、
幻のお茶として知られています。

まず、茶葉が肉厚になる6〜8月頃に茶刈りし、
大釜で2時間ほど蒸します。

碁石茶の製造では、2段階の発酵過程があります。

1回目の発酵では、むしろ(藁の敷物)の上に置いて1週間寝かせ、
カビを付着させます。

2回目の発酵では、カビが付いた茶葉を煮汁につけて重石を乗せ、
数週間、乳酸菌発酵させます。

その後、3〜4cm角に裁断して天日干しすれば完成です。

天日干しすると、茶葉が黒く変色していきます。

その様子が碁石に似ていることから、
「碁石茶」と名付けられたのだとか。

乳酸菌による酸味が特徴的なお茶ですが、
乳酸菌の量がプーアル茶の20倍以上とも言われ、
体にも非常に優しいお茶です。

バタバタ茶(富山県)

バタバタ茶は、「富山黒茶」とも呼ばれる富山県生産のお茶です。

製造方法は阿波番茶や碁石茶とほとんど同じで、
蒸した茶葉をむしろに広げて、40日間発酵させます。

麹菌が死滅しないように室内を65℃以下に保ち、
茶葉の切り返しを数日に一度おこないます。

その後、半日陰干、3日間天日干しをし、乾燥させて完成。

バタバタ茶は、煮出したお茶を茶せんで泡立てて飲むのが一般的です。

この泡立てる様子がバタバタしていることから
「バタバタ茶」と呼ばれるようになったとか。

阿波番茶に比べると酸味が穏やかで飲みやすく、
泡立てることでさらにマイルドな味わいになります。


このページで解説した3つのお茶に加え、
微生物の働きによって発酵させたお茶には
愛媛県で生産される石鎚黒茶(いしづちくろちゃ)もあり、
製造方法は上の3つとほとんど同じです。

いずれの発酵茶もその歴史は古く、
伝統を受け継いできたお茶です。

これらのお茶は生産者が少ない上に、
手間もかかる
ことから、
通常の茶葉よりも希少価値が高くなるため、
スーパーなどではあまり見かけません。

気になるものがあればお取り寄せなどを利用して、
ぜひ試してみましょう。

普通のお茶にはない独特の風味や、やわらかな酸味を
味わってみると、新たな発見があるはずです。

次のページでは、日本の酒類について解説します。