
魚醤とは、醤油の原料に魚介類を使った醤油のことです。
現在の日本では醤油といえば大豆を原料に使ったものが主流ですが、
古代の日本では、魚醤が一般的でした。
魚を保存するために塩漬けすると、
汁が溜まります。
それを調味料として使ったものが魚醤なので、
大豆の醤油よりもずっと手軽だったのです。
日本は海に囲まれているので、
その地域で取れる魚によって異なる魚醤ができ、
かつてはバラエティも豊富だったのでしょう。
魚醤は、基本的に魚介類と塩だけを原料にしているので、
穀物が原料の醤油よりも、
独特の風味があり、旨みもたっぷりです。
魚介類をたっぷりの塩に漬け込むと、
魚肉と内臓のタンパク質が分解されて自然発酵し、
アミノ酸を豊富に含む魚醤となるからです。
魚醤は、タイのナンプラーなどが有名ですが、
日本にも存在します。
このページでは、日本三代魚醤の3つを解説します。
しょっつる(秋田県)
しょっつるの原料は、ハタハタという魚です。

新鮮なハタハタを塩に漬け、
樽に入れて重石を乗せてつくります。
約1〜2年で発酵が進み、
魚肉や内臓は溶けてドロドロの状態になります。
これをろ過すると、
琥珀色のしょっつるのできあがりです。
しかし、魚の乱獲により、ハタハタは一時期絶滅の危機に。
3年間禁漁するまで追い込まれた歴史を持ちます。
以降、ハタハタの漁獲量は少しずつ回復しましたが、
こうした背景からしょっつるにはハタハタ以外の魚も原料に使われるようになり、
ハタハタのみでつくられたしょっつるは非常に貴重になりました。
ハタハタのしょっつるは一般的な魚醤に比べて魚の臭みが少なく、
使いやすいことで知られています。
本場の秋田県では、鍋の味つけに使われ、親しまれています。
いしる(石川県)
いしるは、石川県能登半島でつくられている伝統的な魚醤。
イワシやイカなどの魚を内臓ごと塩漬けし、
1〜2年発酵させてできあがります。
イワシもイカもたくさん獲れるため、
三代魚醤の中でも、いしるの生産量はもっとも多いです。
魚醤は、加熱すると匂いが抑えられますので、
匂いが苦手な人はチャーハンや炒めものなどの隠し味におすすめ。
アジアンテイストの料理にも合うので、
蒸し鶏のドレッシングに混ぜても◎。
いかなご醤油(香川県)

いかなご醤油は、イカナゴという魚を原料につくられている
香川県産の魚醤です。
昭和30年ごろまでは、各家庭でもつくられており、
いかなご醤油が一般的に使われていました。
しかし、大豆からつくられる醤油が人気になり、
いかなご醤油は生産が途絶えてしまいます。
近年になり、関係者の努力により復興が実り、
生産が再開されました。
いかなご醤油はまろやかな風味の魚醤なので、
普通の醤油の代わりとして使うことができます。
鍋や煮物のほか、
刺身や冷奴などのつけ醤油として使うのもおすすめです。
日本の三代魚醤について解説しました。
魚醤は大豆の醤油に比べ消費量が少なく、
これまで使ったことがないという人も多いのではないでしょうか。
日本の伝統を絶やさないためにも、
こうした「日本の良いもの」を知り、
みんなが使って守っていくことも大切なのかもしれませんね。
なお、魚醤は、大豆や小麦などの穀物が使われていないので、
アレルギーがある人にも安心して使えます。
次のページでは、アジア各国の醤油を学習しましょう。