Lesson6-3 醤油③ アジアの醤油・魚醤

醤油と言えば、
日本独自の発酵調味料というイメージが強いのではないでしょうか。

しかし、実はアジア各国にもそれぞれの醤油があります。

日本とは異なる原料でつくられているユニークなものもありますので、
その中でも代表的なものを取り上げて解説します。

生抽(ションチュウ/中国)

中国では醤油が主に2種類あり、
そのうちの1つが生抽です。

生抽の見た目は、日本の淡口醤油にように薄い色をしています。

熟成期間は短く、塩分は高めの醤油です。

味は日本の醤油に近く、まろやかな風味が特徴です。

日本の醤油と同じように、
そのままつけダレとして使うこともでき、
日本料理にも合います。

老抽(ラオチュウ/中国)

中国のもう1つの醤油が、老抽です。

老抽は生抽にカラメル(焦がした砂糖)を加え、
さらに長期間熟成させた醤油になります。

見た目は生抽よりも濃く、日本の溜まり醤油に似ており、
トロッとして黒いのが特徴です。

カラメルを加えてあるため甘みがあり、
塩分は控えめです。

主に煮込み料理などに使う醤油になります。

カンジャン(韓国)

カンジャンは、コチュジャン(唐辛子味噌)やテンジャン(味噌)と並び、
韓国を代表する調味料の1つです。

韓国では伝統のある発酵調味料で、
もともとはテンジャンをつくるときにろ過してとれた汁を、
さらに熟成してつくられたものでした。

カンジャンにはいくつか種類があり、
そのうちクッカンジャンは色が薄めで塩分が高く
スープや和え物によく使われます。

ジンカンジャンは色が濃く、
塩分が低めで甘味のある醤油です。

こちらは煮物などの料理に向いています。

韓国料理、カンジャンケジャン。生のワタリガニを醤油漬けしたもの。

ナンプラー(タイ)

ナンプラーは、タイを代表する魚醤で、
タイ料理には欠かせない存在です。

アジアの二大魚醤の1つとされ、世界的にも有名です。

ナンプラーは、カタクチイワシやアジ、サバなどの魚を原料としているため、
濃厚な旨みと独特の風味をもち、クセのある匂いが特徴となります。

日本の醤油と同じように、料理のつけダレや、
炒めものなどの隠し味に使えます。

ナンプラーを使うだけでも、
炒めものやチャーハンがエスニック風に。

いつもとは違う味つけを楽しみたい時におすすめです。


プリックナンプラー。唐辛子などをナンプラーに浸けたもの。
タイ料理のレストランには、必ずと言っていいほどテーブルに常備されている。

シーユー(タイ)

タイでもっとも一般的なのは上で学んだ魚醤のナンプラーですが、
大豆を原料にした醤油もあります。

それがシーユーです。

シーユーには2種類あり、
そのうちの1つがシーユーカオ。

シーユーカオは、日本の淡口醤油のように色が薄く、
塩分が高いのが特徴です。

つけダレとして使うよりは、
炒めものや煮物でよく使われます。

もう1つがシーユーダム。

シーユーダムは、シーユーカオに糖蜜を加えたものです。

そのため、かなり甘みがあり、見た目も黒くドロっとしています。

日本の溜まり醤油に、みりんを足したようなイメージです。

主に料理に甘みとコクを出したい時、
色を付けたい時に使われます。

そして、料理のつけダレに使われることも。

日本でも人気があるタイ料理、カオマンガイ(鶏飯)のタレには、
シーユーダムが使われています。

カオマンガイ

ニョクマム(ベトナム)

タイのナンプラーとともに、
アジアの二大魚醤とされているのが、ベトナムのニョクマムです。

ニョクマムもナンプラーと同じようなつくり方で、
原料はカタクチイワシなどの魚です。

しかし、味わいは異なります。

ニョクマムはナンプラーよりも発酵度合いが低いため、
魚の香りが強いです。

ニョクマムはベトナム料理には欠かせない調味料で、
日本人にとっての濃口醤油のような存在であり、
多くのベトナム料理に使用されています。

炒めものや煮物、料理のつけダレなど、
あらゆる料理に合う魚醤です。

日本でも人気のベトナム料理である、生春巻きのつけダレや、
フォーの味つけにも◎

生春巻き

ケチャップ(インドネシア)

インドネシアでケチャップと呼ばれるのは、
日本で言うトマトケチャップのことではなく、
醤油のことです。

2種類あり、1つ目がケチャップアシン。

ケチャップアシンは塩辛く、
日本の醤油に似ています。

そしてもう1つがケチャップマニス

こちらはパームシュガーなどの糖分や、
ハーブ、スパイスが加えられているため、
甘みと独特の風味があります。

どちらかというと、ケチャップマニスの方が使われることが多く、
一般家庭やレストランなどにも常備されています。

ナシゴレン(インドネシアのチャーハン)やミーゴレン(焼きそば)などの、
インドネシア料理に欠かせない調味料です。

ナシゴレン

3回に渡って、日本とアジアの醤油・魚醤について
解説してきました。

さまざまな種類の醤油と魚醤があり、
驚いた人もいるのではないでしょうか。

気になるものがあれば使ってみて、
素材や熟成期間による味の違いを感じてみましょう。

次のページでは、味噌について学習します。