
醤油と言えば、
日本独自の発酵調味料というイメージが強いのではないでしょうか。
しかし、実はアジア各国にもそれぞれの醤油があります。
日本とは異なる原料でつくられているユニークなものもありますので、
その中でも代表的なものを取り上げて解説します。
生抽(ションチュウ/中国)
中国では醤油が主に2種類あり、
そのうちの1つが生抽です。
生抽の見た目は、日本の淡口醤油にように薄い色をしています。
熟成期間は短く、塩分は高めの醤油です。
味は日本の醤油に近く、まろやかな風味が特徴です。
日本の醤油と同じように、
そのままつけダレとして使うこともでき、
日本料理にも合います。
老抽(ラオチュウ/中国)
中国のもう1つの醤油が、老抽です。
老抽は生抽にカラメル(焦がした砂糖)を加え、
さらに長期間熟成させた醤油になります。
見た目は生抽よりも濃く、日本の溜まり醤油に似ており、
トロッとして黒いのが特徴です。
カラメルを加えてあるため甘みがあり、
塩分は控えめです。
主に煮込み料理などに使う醤油になります。
カンジャン(韓国)
カンジャンは、コチュジャン(唐辛子味噌)やテンジャン(味噌)と並び、
韓国を代表する調味料の1つです。
韓国では伝統のある発酵調味料で、
もともとはテンジャンをつくるときにろ過してとれた汁を、
さらに熟成してつくられたものでした。
カンジャンにはいくつか種類があり、
そのうちクッカンジャンは色が薄めで塩分が高く、
スープや和え物によく使われます。
ジンカンジャンは色が濃く、
塩分が低めで甘味のある醤油です。
こちらは煮物などの料理に向いています。

ナンプラー(タイ)
ナンプラーは、タイを代表する魚醤で、
タイ料理には欠かせない存在です。
アジアの二大魚醤の1つとされ、世界的にも有名です。
ナンプラーは、カタクチイワシやアジ、サバなどの魚を原料としているため、
濃厚な旨みと独特の風味をもち、クセのある匂いが特徴となります。
日本の醤油と同じように、料理のつけダレや、
炒めものなどの隠し味に使えます。
ナンプラーを使うだけでも、
炒めものやチャーハンがエスニック風に。
いつもとは違う味つけを楽しみたい時におすすめです。

プリックナンプラー。唐辛子などをナンプラーに浸けたもの。
タイ料理のレストランには、必ずと言っていいほどテーブルに常備されている。
シーユー(タイ)
タイでもっとも一般的なのは上で学んだ魚醤のナンプラーですが、
大豆を原料にした醤油もあります。
それがシーユーです。
シーユーには2種類あり、
そのうちの1つがシーユーカオ。
シーユーカオは、日本の淡口醤油のように色が薄く、
塩分が高いのが特徴です。
つけダレとして使うよりは、
炒めものや煮物でよく使われます。
もう1つがシーユーダム。
シーユーダムは、シーユーカオに糖蜜を加えたものです。
そのため、かなり甘みがあり、見た目も黒くドロっとしています。
日本の溜まり醤油に、みりんを足したようなイメージです。
主に料理に甘みとコクを出したい時、
色を付けたい時に使われます。
そして、料理のつけダレに使われることも。
日本でも人気があるタイ料理、カオマンガイ(鶏飯)のタレには、
シーユーダムが使われています。

ニョクマム(ベトナム)
タイのナンプラーとともに、
アジアの二大魚醤とされているのが、ベトナムのニョクマムです。
ニョクマムもナンプラーと同じようなつくり方で、
原料はカタクチイワシなどの魚です。
しかし、味わいは異なります。
ニョクマムはナンプラーよりも発酵度合いが低いため、
魚の香りが強いです。
ニョクマムはベトナム料理には欠かせない調味料で、
日本人にとっての濃口醤油のような存在であり、
多くのベトナム料理に使用されています。
炒めものや煮物、料理のつけダレなど、
あらゆる料理に合う魚醤です。
日本でも人気のベトナム料理である、生春巻きのつけダレや、
フォーの味つけにも◎

ケチャップ(インドネシア)
インドネシアでケチャップと呼ばれるのは、
日本で言うトマトケチャップのことではなく、
醤油のことです。
2種類あり、1つ目がケチャップアシン。
ケチャップアシンは塩辛く、
日本の醤油に似ています。
そしてもう1つがケチャップマニス。
こちらはパームシュガーなどの糖分や、
ハーブ、スパイスが加えられているため、
甘みと独特の風味があります。
どちらかというと、ケチャップマニスの方が使われることが多く、
一般家庭やレストランなどにも常備されています。
ナシゴレン(インドネシアのチャーハン)やミーゴレン(焼きそば)などの、
インドネシア料理に欠かせない調味料です。

3回に渡って、日本とアジアの醤油・魚醤について
解説してきました。
さまざまな種類の醤油と魚醤があり、
驚いた人もいるのではないでしょうか。
気になるものがあれば使ってみて、
素材や熟成期間による味の違いを感じてみましょう。
次のページでは、味噌について学習します。