Lesson6-1 醤油① 日本の醤油

これまでのレッスンで、
日本や世界のさまざまな発酵食品について知識を深めてきましたが、
醤油や味噌、酢といった日常の食卓で欠かせない調味料もまた、
発酵食品です。

そこで、Lesson6からは発酵調味料について詳しく学習しましょう。

日本や世界には、どのような発酵調味料があるのでしょうか。

代表的なものを取り上げ、
その歴史や製造方法、種類や使い方などを解説します。

このページでは、醤油について学習しましょう。

醤油の歴史

「醤油」という言葉が使われるようになったのは、
室町時代とされていますが、
もともとは「醤(ひしお)」という発酵調味料が存在しました。

醤は、野菜、肉、魚、豆などの食物を塩で漬け、
発酵させた保存食です。

この醤が中国から日本に伝わりましたが、
醤は日本で発展を遂げ、味噌が生まれました。

味噌樽に溜まった液体を調味料として使ったのが、
醤油の始まりとされています。

一口に醤油と言っても、
日本にはさまざまな種類の醤油があります。

ここでは日本の代表的な醤油を解説していきます。

※醤油の製造方法については、
Lesson2-2 「発酵のしくみ」ですでに学習しましたので、
復習しておくと良いでしょう。

濃口醤油(こいくちしょうゆ)

一般的な家庭で使われている醤油は、
この濃口醤油です。

全国の消費量の80%を占めています。

名前の通り色が濃く、赤褐色で、
味もしっかりとしたコクがあります。

濃口醤油は万能の発酵調味料で、
料理用にも、卓上用にも用いられています。

全国各地で生産されていますが、
もっとも生産量が多いのは千葉県の野田や銚子です。

そのほか香川県の小豆島も有名な生産地です。

小豆島では、昔ながらの木樽仕込みがおこなわれており、
深い味わいのある醤油を生産しています。

淡口醤油(うすくちしょうゆ)

淡口醤油は主に関西で生産されている醤油です。

濃口醤油よりも色が薄く、香りも控えめです。

よく、淡口醤油は「塩分が控えめ」と思われていますが、
塩分は濃口醤油よりも高めです。

濃口醤油との違いは、
仕込みの時に米麹の甘酒を加えている点になります。

これによって味に深みを出せるのです。

控えめの色と香りの淡口醤油は、
食材そのものの風味を生かしたい料理に使われます。

関西風の色が薄いおでんやお吸い物、
炊き合わせや炊き込みごはんなどに用いると、
素材の味を生かしたきれいな色の料理になります。

溜醤油(たまりしょうゆ)

溜醤油とは、1年以上長期発酵させてつくられる醤油です。

濃口醤油は大豆と小麦の量が同じですが、
溜醤油は大豆の方が多く用いられています。

大豆は、醤油の旨みのもとになります。

そのため、大豆の割合が高い溜醤油はとろりとまろやかで、
濃厚な味が特徴です。

濃い色から塩分は高めに思われますが、
実は濃口醤油よりも塩分は低めです。

溜醤油はその濃厚な味と香りを生かして、
そのままつけダレとして使うのがおすすめ。

刺身や寿司とは相性抜群ですし、
照り焼きや煮物にもよく用いられます。

白醤油

白醤油は、淡口醤油よりもさらに色が薄い、
琥珀色の美しい醤油です。

原料は、小麦と、少量の大豆です。

色を薄く仕上げるために、
仕込みに使う水の塩分濃度を高くし、

熟成期間を約3ヶ月と短くします。

白醤油は認知度が低く、生産者も少ないです。

ちなみに、「白だし」は認知度が高く使っている人も多いですが、
これは白醤油にだしを加えた醤油加工調味料です。

白醤油を使うと、料理がきれいな色に仕上がります。

例えば茶碗蒸しやお吸い物におすすめ。

再仕込み醤油

再仕込み醤油は、山陰〜九州地方の一部でつくられている醤油です。

通常、醤油は、食塩水を入れて仕込むのに対し、
再仕込み醤油はでき上がった生醤油(きじょうゆ)を使って仕込みます。

醤油をつくってから、それを再仕込みするわけですから、
一般的な醤油よりも仕込みに2〜3倍の時間を要します。

もちろん、材料も2倍必要です。

とても贅沢なつくりの醤油ですが個性が出やすく、
中小企業のメーカーがこだわりをもって製造しています。

色は黒っぽく、味も香りも濃厚で旨みもたっぷり。

刺身や寿司、冷奴などにおすすめです。


ほとんどの一般的な家庭では、
醤油は1〜2種類しか常備していないのが普通です。

しかし、料理によって醤油を使い分けると、
味も見た目もワンランクアップします。

普段使っている醤油も、
原料や仕込み方法にこだわりのある醤油を使ってみては
いかがでしょうか。

毎日使うものだからこそ、
納得できるおいしい醤油を見つけたいものです。

次のページでは、「魚醤」について学びます。