このページが世界の発酵食品の学習は
最後のページとなります。
魚の発酵食品を3つ、まずは解説します。
すでに学んだ通り、日本には魚の発酵食品がたくさんありますが、
国外では肉の発酵食品に比べ、
魚の発酵食品はあまりありません。
数少ない魚の発酵食品のうち、
特に有名な3つを見ていきましょう。
シュールストレミング(スウェーデン)

シュールストレミングは、ニシンを塩漬けした缶詰です。
「世界一臭い食べ物」として有名なので、
一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。
まず、ニシンを塩漬けし、数週間発酵させます。
その後、缶に詰められます。
普通の缶詰の製造では、
密閉した缶詰を加熱殺菌しますが、
シュールストレミングの缶詰は加熱されていません。
そのため、缶の中でそのまま発酵が進みます。
発酵の時に二酸化炭素が発生しますが、
その圧力で缶が膨張します。
シュールストレミングの缶詰を開ける時、
缶の中から激臭の液体がガスとともに噴き出てくるのは、
このためです。
もしもシュールストレミングを食べる機会があったら、
必ず人のいない屋外で、
手袋やレインコートを着用して缶を開けましょう。
アンチョビ(地中海)

アンチョビは日本のスーパーでも販売されており、
一般家庭にも浸透している魚の缶詰ですが、
これも発酵食品の一つです。
アンチョビは、カタクチイワシを塩漬けして、
発酵と熟成をさせた後、オリーブオイルに浸して缶詰にしたものです。
アンチョビはかなり塩味が強くしょっぱいので、
刻んで料理のトッピングに使ったり、
野菜のディップに使うソースや、
トマトソースの隠し味に使うのがおすすめ。
ホンオフェ(韓国)

ホンオフェとは、韓国の魚の発酵食品です。
ホンオ=ガンギエイ、フェ=刺身という意味で、
つまりガンギエイの刺身のことを言います。
刺身とは言っても、ガンギエイを壺に入れて10日間ほど発酵させます。
すると、アンモニア臭が発生し完成となります。
食べる時もこのアンモニア臭がとても辛いですが、
ポッサム(茹で豚)、キムチと一緒に食べると香りが中和され、
食べやすくなります。
韓国では珍味であり、高級食材としても知られていますが、
あまりの臭さに食べられない人も多いのだとか。
プーアール茶(中国)

プーアール茶は、中国雲南省で主に生産されている発酵茶です。
まず、茶摘みした茶葉を加熱して酸化を止めます。
その後、麹カビで発酵させます。
そして茶葉を蒸して圧をかけ、
成形していきます。
それを貯蔵している間にさらに発酵が進み、
プーアール茶ができあがります。
プーアール茶は、熟成させればさせるほど商品価値が上がるため、
10年以上熟成させたお茶も中にはあります。
プーアール茶にはさまざまな健康効果が期待されていますが、
リパーゼという酵素の一種が消化を促進し、脂肪を分解してくれるので、
胃もたれを防いでくれます。
ダイエットにも効果があるとされ、
一時期話題になりました。
バニラビーンズ

バニラはアイスクリームや洋菓子など、
さまざまなスイーツに使われていますが、
もともとはどのようなものなのでしょうか。
バニラはつる性の植物で、
受粉すると豆ができます。
さやの中には細かい種がたくさん入っていますが、
これがバニラビーンズです。
しかし、このままではバニラの香りはしません。
発酵→乾燥→湿気を与えて発酵→乾燥
という作業を何度も繰り返して初めて、
バニラの香りが生み出されます。
手間ひまかけられてつくられているので、
バニラビーンズは高価な食材なのです。
コピ・ルアク

高級コーヒー、「コピ・ルアク」を知っていますか。
一般的にコーヒーは発酵とは無関係ですが、
このコピ・ルアクは信じがたいような方法で発酵させられています。
コピ=コーヒー、ルアク=ジャコウネコという意味ですが、
ジャコウネコはコーヒーの実を食べます。
果実はお腹の中で消化されてしまいますが、
種は消化されずに糞と一緒に排出されます。
この排出された種を集めたものがコピ・ルアクです。
つまり、ジャコウネコのおなかの中で発酵したということですが、
そのため独特の香りがするコーヒーになります。
ちなみに、世界にはこのようなコーヒーが他にもあり、
例えばタイにはゾウの糞から採取した希少なコーヒーがあります。
Lesson5では、世界の発酵食品について学習してきました。
日本では一般的になっているヨーグルトやチーズ、
発酵ソーセージなどもありましたが、
中には初めて知った発酵食品もあったはずです。
個性的な発酵食品もありましたが、
機会があればぜひ食べるのに挑戦してみましょう!
次のLesson6では、発酵調味料について学びます。