
日本発の肉の発酵食品はありませんが、
世界には肉の発酵食品がたくさんあります。
その代表が、ソーセージです。
日本でもワインやビールの肴にソーセージを食べる人が多いですが、
ソーセージには種類があり、
微生物によって発酵させているもの(発酵ソーセージ)と、
そうでないものがあります。
発酵ソーセージのうち、
特にヨーロッパ発祥の発酵ソーセージは、
「セミドライソーセージ」と「ドライソーセージ」があるので、
ここで違いを理解しておきましょう。
セミドライソーセージ
セミドライソーセージは、ひき肉を腸詰めした後、
発酵させます。
最終的に、水分含有量が55%以下のものが、
セミドライソーセージとなります。
代表的なものでは、サラミがセミドライソーセージになります。
ドライソーセージ
ドライソーセージは、ひき肉を腸詰めした後、
カビ付けがおこなわれ、発酵させます。
熟成期間がセミドライソーセージよりも長く、
最終的な水分含有量は35%以下です。
代表的なものでは、カルパスがあります。
それでは、肉の発酵食品の中でも、
代表的なものを見ていきましょう。
フエ(スペイン)

スペインの発酵ソーセージで有名なものに、
白カビで覆われた「フエ」があります。
フエは、ドライソーセージの一種です。
ソーセージを覆っている白カビによって、
肉のタンパク質と脂質が分解され、
熟成が進みます。
さらに内部の水分も吸収されて乾燥するので、
保存性も増します。
カビ臭さはなく、
食べると口の中に肉の脂が溶けて広がり、
噛むほどに味わいが増していきます。
だからといって脂っこいわけではなく、
スパイスがきいているので、しつこさがありません
フエはカビを取らずに、スライスしてそのまま食べられます。
ワインなどのお酒の肴にピッタリです。
または、サンドイッチの具や、
ピザのトッピングにしてもおいしく召し上がれます。
セルベラート(ドイツ)

セルベラートは、世界でもっとも古いソーセージとして知られる、
ドイツ発祥の発酵ソーセージです。
細かく刻んだ肉のミンチを塩漬けし、
スパイスを加えた後、腸詰めします。
それを冷燻(低温で長時間スモーク)させると、
水分が抜け、
乳酸発酵によりまろやかな旨みが生じます。
肉も脂肪もきめ細かくコクのある味わいが特徴で、
乳酸菌による酸味も食をそそります。
濃厚な味を楽しむために、
ビールやワインのつまみにそのまま食べるのがおすすめ。
サンドイッチの具にしても◎。
チョリソ(スペイン)

チョリソは、スペイン発祥の発酵ソーセージです。
日本では、「チョリソは辛い」というイメージがありますが、
本場スペインのチョリソは、実は辛くありません。
辛いチョリソがあるのは、スペインから中南米に伝わった後、
唐辛子が加えられるようになったためです。
日本で食されるチョリソは、
この中南米風のものが多いのでしょう。
スペインのチョリソが赤いのは唐辛子のためでなく、
肉の調味にパプリカが使われているためです。
スライスしてそのまま食べてもおいしいですが、
チョリソは煮込み料理やスープなどに入れたり、
焼いて食べることも多いです。
ネムチュア(ベトナム)

実はアジア諸国にも、
肉の発酵食品が存在しますが、
ヨーロッパ発祥のソーセージとは材料や熟成期間が異なります。
まず、ベトナムには発酵ソーセージ「ネムチュア」があります。
「Nem=クレープ、春巻き」などの意味で、
「Chua=すっぱい」という意味です。
ネムチュアはグアバやバナナの葉にくるまれた、
その名の通り酸っぱい味のソーセージなのです。
ネムチュアは、豚肉に塩、コショウ、ニンニクなどを混ぜ、
グアバとバナナの葉でくるみ、
数日涼しい場所で発酵させればできあがりです。
辛さと酸味が合わさった、
複雑な味が楽しめます。
ベトナム全土で愛されるソーセージですが、
地域によって形や味わいが異なります。
発酵食品とはいえ、材料は生肉ですので、
お腹の弱い人は体調と相談して挑戦した方が良いでしょう。
ネーム(タイ)

タイにも発酵ソーセージ「ネーム」があります。
ネームは、豚肉に塩、ニンニク、唐辛子、もち米を混ぜ、
常温で数日間乳酸発酵させたものです。
乳酸により雑菌の繁殖が抑えられ、
酸っぱい味が何ともおいしいソーセージができあがります。
発酵食品ですので、生で食べられないこともありませんが、
タイでは焼いて食べることが多いです。
旅行中に食べる時などは、
焼いて食べた方が安全でしょう。
生ハム

生ハムは、豚肉を塩漬けし、乾燥させて
長期間熟成させた発酵食品です。
加熱処理はされていません。
熟成期間が長いほど品質は良くなり、
通常でも2年、長いものでは5年もかけて熟成させていきます。
ヨーロッパには多くの生ハムがありますが、
特に有名なのは、
スペインのプロシュートと、
イタリアのハモンセラーノです。
実は中国にも生ハムがあり、
その一つである「金華ハム」は世界的にも有名。
中国の生ハムは、
まるで日本の鰹節を作るときのように、
表面にカビを生やしながら熟成させていくのが特徴です。
鰹節同様に、熟成を経た生ハムは非常に固く仕上がります。
ヨーロッパの生ハムはそのまま食べるのが一般的ですが、
中国の生ハムはそのまま食べるのではなく、
煮物や炒め物、スープのダシに使われることが多いです。
肉の発酵食品について解説しました。
ヨーロッパの発酵ソーセージや生ハムは有名で、
日本でも好んで食べる人は多いでしょう。
このレッスンでそれぞれの違いを理解したことで、
次に食べる時には味わいも変わってくるはずです。
アジア諸国の肉の発酵食品は、
なかなか日本では食べることはできないと思いますので、
旅行などで機会があれば(体調と相談しながら)ぜひ試食してみてください。