Lesson5-2 肉

日本発の肉の発酵食品はありませんが、
世界には肉の発酵食品がたくさんあります。

その代表が、ソーセージです。

日本でもワインやビールの肴にソーセージを食べる人が多いですが、
ソーセージには種類があり、
微生物によって発酵させているもの(発酵ソーセージ)と、
そうでないものがあります。

発酵ソーセージのうち、
特にヨーロッパ発祥の発酵ソーセージは、
「セミドライソーセージ」と「ドライソーセージ」があるので、
ここで違いを理解しておきましょう。

セミドライソーセージ

セミドライソーセージは、ひき肉を腸詰めした後、
発酵させます。

最終的に、水分含有量が55%以下のものが、
セミドライソーセージとなります。

代表的なものでは、サラミがセミドライソーセージになります。

ドライソーセージ

ドライソーセージは、ひき肉を腸詰めした後、
カビ付けがおこなわれ、発酵させます。

熟成期間がセミドライソーセージよりも長く、
最終的な水分含有量は35%以下です。

代表的なものでは、カルパスがあります。

それでは、肉の発酵食品の中でも、
代表的なものを見ていきましょう。

フエ(スペイン)

スペインの発酵ソーセージで有名なものに、
白カビで覆われた「フエ」があります。

フエは、ドライソーセージの一種です。

ソーセージを覆っている白カビによって、
肉のタンパク質と脂質が分解され、
熟成が進みます。

さらに内部の水分も吸収されて乾燥するので、
保存性も増します。

カビ臭さはなく、
食べると口の中に肉の脂が溶けて広がり、
噛むほどに味わいが増していきます。

だからといって脂っこいわけではなく、
スパイスがきいているので、しつこさがありません

フエはカビを取らずに、スライスしてそのまま食べられます。

ワインなどのお酒の肴にピッタリです。

または、サンドイッチの具や、
ピザのトッピングにしてもおいしく召し上がれます。

セルベラート(ドイツ)

セルベラートは、世界でもっとも古いソーセージとして知られる、
ドイツ発祥の発酵ソーセージです。

細かく刻んだ肉のミンチを塩漬けし、
スパイスを加えた後、腸詰めします。

それを冷燻(低温で長時間スモーク)させると、
水分が抜け、
乳酸発酵によりまろやかな旨みが生じます。

肉も脂肪もきめ細かくコクのある味わいが特徴で、
乳酸菌による酸味も食をそそります。

濃厚な味を楽しむために、
ビールやワインのつまみにそのまま食べるのがおすすめ。

サンドイッチの具にしても◎。

チョリソ(スペイン)

チョリソは、スペイン発祥の発酵ソーセージです。

日本では、「チョリソは辛い」というイメージがありますが、
本場スペインのチョリソは、実は辛くありません

辛いチョリソがあるのは、スペインから中南米に伝わった後、
唐辛子が加えられるようになったためです。

日本で食されるチョリソは、
この中南米風のものが多いのでしょう。

スペインのチョリソが赤いのは唐辛子のためでなく、
肉の調味にパプリカが使われているためです。

スライスしてそのまま食べてもおいしいですが、
チョリソは煮込み料理やスープなどに入れたり、
焼いて食べることも多いです。

ネムチュア(ベトナム)

実はアジア諸国にも、
肉の発酵食品が存在しますが、
ヨーロッパ発祥のソーセージとは材料や熟成期間が異なります。

まず、ベトナムには発酵ソーセージ「ネムチュア」があります。

「Nem=クレープ、春巻き」などの意味で、
「Chua=すっぱい」という意味です。

ネムチュアはグアバやバナナの葉にくるまれた、
その名の通り酸っぱい味のソーセージ
なのです。

ネムチュアは、豚肉に塩、コショウ、ニンニクなどを混ぜ、
グアバとバナナの葉でくるみ、
数日涼しい場所で発酵させればできあがりです。

辛さと酸味が合わさった、
複雑な味が楽しめます。

ベトナム全土で愛されるソーセージですが、
地域によって形や味わいが異なります。

発酵食品とはいえ、材料は生肉ですので、
お腹の弱い人は体調と相談して挑戦した方が良いでしょう。

ネーム(タイ)

タイにも発酵ソーセージ「ネーム」があります。

ネームは、豚肉に塩、ニンニク、唐辛子、もち米を混ぜ、
常温で数日間乳酸発酵させたものです。

乳酸により雑菌の繁殖が抑えられ、
酸っぱい味が何ともおいしいソーセージができあがります。

発酵食品ですので、生で食べられないこともありませんが、
タイでは焼いて食べることが多いです。

旅行中に食べる時などは、
焼いて食べた方が安全でしょう。

生ハム

生ハムは、豚肉を塩漬けし、乾燥させて
長期間熟成させた発酵食品です。

加熱処理はされていません。

熟成期間が長いほど品質は良くなり、
通常でも2年、長いものでは5年もかけて熟成させていきます。

ヨーロッパには多くの生ハムがありますが、
特に有名なのは、
スペインのプロシュートと、
イタリアのハモンセラーノ
です。

実は中国にも生ハムがあり、
その一つである「金華ハム」は世界的にも有名。

中国の生ハムは、
まるで日本の鰹節を作るときのように、
表面にカビを生やしながら熟成させていくのが特徴です。

鰹節同様に、熟成を経た生ハムは非常に固く仕上がります。

ヨーロッパの生ハムはそのまま食べるのが一般的ですが、
中国の生ハムはそのまま食べるのではなく、
煮物や炒め物、スープのダシに使われることが多いです。


肉の発酵食品について解説しました。

ヨーロッパの発酵ソーセージや生ハムは有名で、
日本でも好んで食べる人は多いでしょう。

このレッスンでそれぞれの違いを理解したことで、
次に食べる時には味わいも変わってくるはずです。

アジア諸国の肉の発酵食品は、
なかなか日本では食べることはできないと思いますので、
旅行などで機会があれば(体調と相談しながら)ぜひ試食してみてください。